【シーケンス制御入門 第2回】ボタンを離しても動き続ける!「自己保持回路」の仕組みと実効配線ガイド

前回の「第1回:リレーの基本構造と動作原理」では、リレーを使って小さな電気信号で大きな機器を安全にON/OFFする仕組みを学びましたね。

リレーの基本を覚えると、次に考えてみたくなるのが「機器の動かし方の使い分け」です。

DIYでスマート農業や自動散水システムを作るとき、用途によって動作パターンを分けたい場面が出てきます。

  • 手動でちょっとだけ給水したいとき ⇒「ボタンを押している間だけ」散水ポンプを動かしたい(手動操作・微調整)
  • 畑全体へしっかり水やりを開始したいとき ⇒「スタートボタンをポチッと一回押したら」、ボタンから指を離してもストップボタンを押すまでポンプに動き続けてほしい(自動運転)

「押している間だけ動く」のはリレー単体でもできますが、「指を離しても動き続ける」「ストップボタンを押すまで状態を維持する」ためには、シーケンス制御の超・重要テクニックである「自己保持回路(じこほじかいろ)」が必要になります。

今回は、この自己保持回路の考え方から、リレーを使った仕組み、回路図・タイムチャートの見方、そして14ピンリレー(MY4N等)とスタート・ストップボタンを使った具体的な配線手順まで分かりやすく解説します!

1. 自己保持回路とは?(なぜ必要なの?)

「押している間だけ」と「押し続けなくてもOK」の違い

私たちが日常で使うモメンタリ形(押している間だけONになる)押しボタンスイッチは、指を離すとバネの力で元のOFF状態に戻ってしまいます。

ポンプの試運転や少しだけの水やりなら「押している間だけ動作」で問題ありませんが、本格的な水やりで何分も手でボタンを押し続けるわけにはいきませんよね。

そこで、「リレー自身の接点を使って、自分自身のコイルに電源を供給し続ける回路」を作ります。これが「自己保持回路」です。

スタートボタンから指を離してスイッチがOFFに戻っても、リレーが自分の力で「ON」を保持(キープ)してくれるため、一度のボタン操作で継続的な運転が可能になります。

2. リレーを使った自己保持回路の仕組み

自己保持回路の核心は、「スタートボタン(起動スイッチ)」と「リレーのNO(常時開)接点」を並列に接続することにあります。

実際に、どのような流れになるかというと…

  1. スタートボタン(NO接点)を押す ⇒ リレーのコイルに電気が流れ、リレーがON(励磁)になる。
  2. リレー自身のNO接点が閉じる(導通する) ⇒ ボタンから指を離してスタートボタン側がOFFになっても、閉じているリレー接点を通ってコイルに電気が流れ続ける。
  3. 動作維持 ⇒ これで「自己保持」が完了!ポンプやLEDが動作し続けます。

3. 回路図と動作タイムチャート

仕組みを視覚的に理解するために、回路のフローとタイムチャートを見てみましょう。

自己保持回路の動作フロー

自己保持回路の電流ルール(動作フロー)
電源(+/L)
│
【ストップボタン(NC接点)】
※普段は電気を通す(閉状態)
│
ルートA:スタートボタン
押した瞬間だけ導通
ルートB:リレーa接点
ON後はここから保持!
▼ 合流してコイルへ給電
リレーコイル(励磁)& 電磁弁・ポンプ稼働

タイムチャート(動作タイミング)

動作の変化を時系列で表したタイムチャートです。

信号 / 状態① 初期状態② スタートボタンON③ ボタン離す④ ストップボタンON⑤ 初期状態復帰
スタートボタン (NO)OFFONOFFOFFOFF
ストップボタン (NC)ON (通電)ONONOFF (遮断)ON
リレーコイルOFFONONOFFOFF
自己保持用接点開閉閉開開
出力(散水ポンプ)OFFONONOFFOFF
  • ポイント: ②でスタートボタンを押してONになると、③でボタンを離してOFFに戻しても、出力とリレーコイルはONを維持していますね!

4. なぜ「ストップ(停止)ボタン」はNC接点(b接点)なのか?

自己保持回路は一度ONになると「自分で自分に電気を送り続ける」ため、意図的に回路を切断してあげないと永遠に止まりません。

そこで必要なのがストップ(停止)ボタンです。

NC接点(Normally Closed / b接点)を使う理由

  • NO接点(a接点): 普段は「開」いていて、押すと「閉」じる(電気を通す)。
  • NC接点(b接点): 普段は「閉」じていて、押すと「開」く(電気を止める)。

自己保持を解除するには、リレーコイルへの電源供給ルートを途中で「バッサリ切断」する必要があります。

そのため、電源の元口(直列の位置)にNC接点のストップボタンを挟みます。

ストップボタンを押すと、NC接点が離れて電流がストップし、リレーのコイルがOFF(無励磁)になります。その結果、自己保持用の接点も開き、元のOFF状態に戻る仕組みです。

5. 実際の接続手順(14ピンリレー MY4N + 押しボタンスイッチ)

ここからは、DIYスマート農業で最もよく使われる制御リレーの代表格「OMRON 14ピンリレー(MY4NソケットPYF14A付き)」とDC24V電源を使った具体的な配線手順を解説します!

用意するもの

  1. 14ピンリレー&ソケット(OMRON MY4N + PYF14Aソケット)
  2. スタートボタン(緑色・NO / a接点スイッチ)
  3. ストップボタン(赤色・NC / b接点スイッチ)
  4. DC24V電源(+端子とー端子)
  5. 導線(配線用電線):計6本(※短めのジャンプ線を含む)

この構成で実験してみようと思います。

リレーがONになれば、その後ろの負荷は動くと認識できますのでこの構成で大丈夫です。

自己保持回路のシーケンス図

自己保持回路はどのようにして確立されているのか、シーケンス図を見ながら確認しましょう。

  1. 電気は+24v電源からBS2(ボタンスイッチ2)b接点を通る
  2. BS1(ボタンスイッチ1)が押される(ON)と、R1(リレー)が励磁する
    • 電気の流れは+24Vからリレーを通過して-24vに1本の線でつながることがわかります。
  3. すると、R1の自己保持接点が閉じる(通電する)⇒ BS1が押された状態と同じ状態が作られる
  4. BS1から手を放しても、R1自己保持接点がつながったままなので、R1リレーには給電され続ける
    • 電気の流れは+24Vからリレーの自己保持接点と通って-24vに1本の線でつながることがわかります。
  5. BS2(ボタンスイッチ2)を押すと、BS2はb接点なので接点が開く
    • 接点が開くと電気の流れが遮断されますのでR1リレーに供給されていた電気が止まります。
    • するとR1自己保持接点も開きますので通電しない状態になりこの回路は停止(OFF)します。

目で追ってみると理解できるのではないでしょうか?

自己保持回路 シーケンス図

+24V (L) 0V (N) 電流の流れる向き BS2 停止[b接点] BS1 始動[a接点] R1 自己保持接点 R1 電磁リレー (コイル)

【組立て】

早速、組み立てて動作するかを確認していきます。

参考に私が使用している試作実験用ボードを紹介します。

【構成】
・100V安全ブレーカー
・ヒューズボックス 5A
・コンバーター 100Vから24Vへ変換
・端子台 100V電源取り出し2系統
・DINレール 12㎝

ヒューズボックスは過電流が流れた場合の対策です。

構成部品の詳細チェック

【部品構成】

・スタートスイッチ(緑)
・ストップスイッチ(赤)
・リレー端子台
・24Vリレー(4極)

スイッチの形状

このスイッチはNO/NCの接点が各1個ずつ付いたタイプのスイッチです。
側面からみると下の部分が表と裏で赤色と緑色になっているのがわかると思います。

【上段】
NC(ノーマルクローズ)
こちら側を使用して結線すると、b接点として機能します。

【下段】
NO(ノーマルオープン)
こちら側を使用して結線すると、b接点として機能します。

【端子番号確認】  NC…11,12 NO…23,24

← 24V用のリレーとソケット 14ピン

組立た状態
こちら →

これらを組み立て、配線していきます。
各部品の端子台の番号を確認してシーケンス図に落とし込んでいきましょう。

端子位置と接続先を一目で確認!「配線コード表」

配線作業に入る前に、全体で「どの端子とどの端子を繋ぐか」の一覧表をチェックしておきましょう。この表の通りに接続するだけで完成します!

電線番号出発点(ここから)到着点(ここへ)役割・解説
①DC24V電源 (+)ストップボタン(赤)端子12回路のメイン電源供給
②ストップボタン(赤)端子11スタートボタン(緑)端子24制御電源の送り線
③ストップボタン(赤)端子11リレーソケット 「5」自己保持への渡り線(ジャンプ線)
④スタートボタン(緑)端子23リレーソケット 「14」起動信号(コイル+側)
⑤リレーソケット 「9」リレーソケット 「14」自己保持フィードバック線(a接点→コイル)
⑥リレーソケット 「13」DC24V電源 (ー)コイルのマイナス帰還線

※ストップボタン端子11からは、渡り線(ジャンプ線)を使って「スタートボタン端子24」と「リレー端子5」の2箇所へ分岐接続します。

この通り繋げば完成!ステップ別実効配線手順

【完全接続】MY4N自己保持回路の1本ずつ配線手順
① 回路のメイン電源供給
【出発点】DC24V電源(+) ➔ 【到着点】ストップボタン(赤)端子12
② 制御電源の送り線
【出発点】ストップボタン(赤)端子11 ➔ 【到着点】スタートボタン(緑)端子24
③ 自己保持への渡り線(ジャンプ線)
【出発点】ストップボタン(赤)端子11 ➔ 【到着点】リレーソケット「5」
④ 起動信号(コイル+側)
【出発点】スタートボタン(緑)端子23 ➔ 【到着点】リレーソケット「14」
⑤ 自己保持フィードバック線(a接点→コイル)
【出発点】リレーソケット「9」 ➔ 【到着点】リレーソケット「14」
⑥ コイルのマイナス帰還線
【出発点】リレーソケット「13」 ➔ 【到着点】DC24V電源(ー)
配線チェック:緑ボタンを押すと「カチッ」と音がしてリレーのLEDが点灯維持!赤ボタンで消灯すれば大成功です!

6. まとめ

  • 自己保持回路とは、スタートボタンを離してもリレー自身の接点を使ってON状態を維持する回路。
  • 配線のコツは「スタートボタン」と「リレーのNO接点」を並列に繋ぐこと。
  • 回路を止めるために、直列の位置へNC接点(b接点)のストップボタンを配置する。

この自己保持回路が理解できれば、散水ポンプのワンタッチ運転や安全停止ロジックなど、スマート農業におけるハードウェア制御の自由度が劇的に上がります!

次回の予告

自己保持回路ができるようになったら、次に欲しくなるのは「〇分間だけ散水して、自動で止まってほしい!」という時間制御ですよね。

次回、【シーケンス制御入門 第3回】タイマーリレーを使った自動オフ(時限制御)の作り方 でお会いしましょう!タイマーリレーと自己保持を組み合わせた、実践的な自動散水回路の組み方をわかりやすく解説します。

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