
前回は「2系統自動散水&環境モニタリング制御盤の全体構想と、仕様」を決めるところまでやりました。そこで、今回はその全体像を踏まえ、どんな風な制御回路にするかを設計していきたいと思います。
これから作ろうとしているシステムにはどんな部品が必要で、その部品はどのように動作するのか。
それらの機能と動きや働きがわかれば、どのように配置していけばいいのかがなんとなく想像できます。
あとはその機能と働きがわかったうえで配置していけばいいわけです。
しかし、どうしても電気の流れがわからないと配置はできても正しく動作させることができません。
そのための助けとなるのが「図面」になっていくわけです。
正しい図面が描ければ、実際の組み立てや将来のメンテナンスで迷うことが少なくなります。
必要な図面を完成させることができれば、組立て作業はスムーズに進みますし、トラブルシュートも容易になるというわけです。
1. 図面を作ろう!シーケンス図を使って進める配線設計
お題として大きく出ましたが、「図面を書こう」ったって、そんなに簡単な話じゃありません。
いきなり完璧を求めたって、思うようにいかないのが世の常。
まずは「どんな感じなのか」、「どんなふうにしてみようか」で十分だと思います。
今回やってみようとしていることは「市販品を買って据え付けて、蛇口をひねってハイ終わり!」とはいきません。
欲を満たすために市販品にはない機能を持たせるために頑張っているんですから。(w)
じっくり行きましょう。
2. 【回路の全体ブロック図】主回路と制御回路、動作回路をきれいに分離する
安全な制御盤の鉄則は、「大電流を扱う主回路」と「デリケートな低電圧の制御回路」を明確に分離(または絶縁)することです。
ここで一度、これから作ろうとしているシステム(以降、制御盤といいますね)の仕様をもう一回確認してみましょう。
この要件を満たすために電気を使うわけですが、これらを電気回路として分類すると以下のようになります。
1.設定した時間になったら … 制御回路
- 散水する曜日、時間を管理する機能
- 検討部品:タイマー
2.環境に合わせて … 制御回路
- 温度・光・圧力・加速度などの物理的・化学的な変化を検出し、コンピュータや制御機器が扱える電気信号に変換して出力する機能
- 検討部品:温湿度センサー、土壌湿度センサー、降雨センサー
3.決められた条件に合致するか判断し、動作対象に命令を伝達 … 制御回路
- 情報に基づいて指定された条件に当てはまるかを判断する機能
- 判断した結果を実行させる機能
- 検討部品:ESP32(マイコン)
4.命令に従い動作する … 動作回路
- 電気信号を受け取り動作する
- 検討部品:ソレノイドバルブ、OLED(モニタリングの表示器)、ランプ
制御回路、動作回路と出てきましたが、これら回路に電力供給する大本が主回路になります。
この3つに分類しブロック分けして設計していくというのがどうやら基本のようです。
主回路、制御回路、動作回路、それぞれどれぐらいの電圧が必要か
一般に家庭で使用している電気は100Vです。
IHコンロやヒーターなどを使用している家庭では専用に200Vのコンセントがありますが、テレビや冷蔵庫、洗濯機などは100V、エアコンは100Vまたは200Vの専用コンセントになっています。
今回の制御盤は100Vの一般コンセントから給電し動作するものを作ろうとしています。
したがって、主回路については家庭の100Vコンセントから電気をもらうことになります。
続いて制御回路ですが、今回、システムの動作条件を決定したり指示したりを担う、いわゆる「頭脳」部分は「ESP32」というマイコンに担当させます。
「ESP32」?なにそれ?という方もいるかと思いますが、簡単に紹介しますと、低コストで高性能なマイクロコントローラ(マイコン)のことです。
このESP32、価格として2,000円弱ていどで入手可能なんですが、Wi-FiとBluetoothを標準搭載しています。
様々なセンサーが接続でき、プログラムによって外部機器を制御することができます。
Wi-FiとBluetoothが標準装備されているので、必要に応じて外部からの遠隔操作も可能になってくるということです。
この頭脳に当たる部分を担う「ESP32」の動作電圧範囲は2.3V〜3.6V(推奨は3.3V)と小さな電圧で動作します。
したがって、ここ制御回路に供給する電圧は5V弱ということになります。
動作回路については、今回は自動散水ということで、ソレノイドバルブ(電磁弁)を使用します。
電気信号(電流)を利用して電磁石(ソレノイド)を動かすことで、空気・水・油・ガスなどの流体の流れや方向を制御する機器です。
ソレノイドバルブは大小さまざまなサイズがあります。一般家庭から工場など、いろんなところで使われている「ソレノイドバルブ」。
あまりなじみのない言葉ではありますが、普段の生活の中でも様々なところで使われています。
身近なところで言うと、洗濯機。
自動ボタンを押してスタートさせると、洗濯槽の中に水が注がれます。この水を灌ぐためのバルブ開閉にはソレノイドバルブが使用されています。
自動のコーヒーメーカーも、勝手にお湯が注がれますが、ここにも使われています。
見えないけれど、開閉動作があるところには使用されているケースが多いです。
ところで、今回動作回路で使う「ソレノイドバルブ」はというと、屋外使用想定をしていましたので24V仕様のものを選定しようとしています。
散水の水源は水道水からとして、蛇口の開閉の自動化をするようなものです。
まとめますと、
- 主回路 … 100V
- 制御回路 … 5V弱
- 動作回路 … 24V
この3つに分類することになります。
AC100V 入力 (L / N)
過電流・ショート保護(最上流)
盤内一括ON/OFF制御
安定化 24V出力母線
主許可リレー & 第1/第2系統リレー
Manual / Off / Auto 切替回路
第1系統 (SV1) / 第2系統 (SV2)
マイコン用安定化 5V (電池バックアップ)
中央演算・ロジック判定・GPIO制御
高精度オフライン時刻管理
土壌水分センサー / 温湿度センサー (DHT11)
状態モニタリング & 緊急停止・点滅インジケータ
3.【動作ロジック】2系統自動散水の回路
実際にどのように動作する回路にするか考えていきましょう。
⏱️ 2系統順次散水の動作フロー
- トリガー条件: どうなったら散水するか
- 「毎日設定した時刻(例: 朝6:00)」かつ「外気温 ≧ 25℃」かつ「土壌湿度が乾燥状態」。
- 自動散水:メイン切り替えスイッチが「自動」になっている場合
- 第1系統、第2系統のスイッチの状態で動作切り替え
- 第1系統、第2系統 両方ON
- 条件成立と同時に、ESP32が第1系統用のリレー信号をON
- 第1系統のDC24Vソレノイドバルブが開き、一定時間散水
- ESP32が第1系統用のリレー信号をOFF
- 続いてESP32が第2系統用のリレー信号をON
- 第2系統のDC24Vソレノイドバルブが開き一定時間散水
- 散水完了後第2系統のリレー信号をOFF
- 第1系統 ON、第2系統 OFF
- 条件成立と同時に、ESP32が第1系統用のリレー信号をON
- 第1系統のDC24Vソレノイドバルブが開き一定時間散水
- ESP32が第1系統用のリレー信号をOFF
- 散水完了後、待機中の表示
- 第1系統 OFF、第2系統 ON
- 条件成立と同時に、ESP32が第2系統用のリレー信号をON
- 第2系統のDC24Vソレノイドバルブが開き一定時間散水
- ESP32が第2系統用のリレー信号をOFF
- 散水完了後待機中の表示待機中の表示
- 第1系統 OFF、第2系統 OFF
- 動作なし、1・2系統 OFF の表示
- 第1系統、第2系統 両方ON
- 第1系統、第2系統のスイッチの状態で動作切り替え
- 手動散水:メイン切り替えスイッチが「手動」になっている場合
- 第1系統、第2系統 両方ON
- 第1系統、第2系統用のリレー信号をOFF。
- 1・2系統がONです。選択を変更してください。の表示
- 第1系統 ON、第2系統 OFF
- 第1系統のバルブをオープンして散水開始。
- STOPボタン点滅
- STOPボタン押下でバルブをOFFし散水停止
- 第1系統 ON、第2系統 OFF
- STOPボタン点滅
- STOPボタン押下でバルブをOFFし散水停止
- 第1系統、第2系統用のリレー信号をOFF。
- 第1系統、第2系統 両方ON
- その他条件:
- 現時点では無し
今回はこんな風にしてはどうかなと考えています。
4.【リレーの多段接続】3.3V信号で24Vバルブを安全に動かす仕組み
「ESP32のGPIOピンが出力できるのは3.3V / 数mA程度の微弱な信号」です。
これに対して「DC24Vソレノイドバルブ」は動作時にそれなりの電流を消費するため、マイコンから直接駆動することは絶対にできません。
そこでこのシステムでは、「リレーの多段接続(2段階の増幅・絶縁)」という手法をとります。
- 第1段階:フォトカプラ絶縁リレーモジュール(JQC3F-05VDC-C)
- このフォトカプラはESP32の3.3Vデジタル出力で駆動します。
内部の発光ダイオードとフォトトランジスタで電気的に完全に空間絶縁(フォトカプラ)された状態で、5V/12V系のトリガー信号を作ります。
- このフォトカプラはESP32の3.3Vデジタル出力で駆動します。
- 第2段階:産業用パワーリレー(MY4N / DC24V駆動)
- フォトカプラリレーの接点を介して、より強力なDC24Vの電力をMY4Nのコイルに供給します。
- MY4Nの頑丈な接点が切り替わることで、大容量のDC24Vソレノイドバルブへ確実に電流を流し込みます。
この仕組み、イマイチわからんという人いますよね。
私もそうでした。ちょっと深く知っておきたい内容ですので、別のページを用意しますね。
- フォトカプラリレーの接点を介して、より強力なDC24Vの電力をMY4Nのコイルに供給します。
この「小信号 ➔ フォトカプラ絶縁 ➔ パワーリレー ➔ バルブ」という多段ステップを踏むことで、マイコンの安全性と回路全体の耐久性が飛躍的に向上します。
リレー(ミニパワーリレー)の仕組み、フォトカプラの仕組み、知ってると今後の応用に大きく貢献します。
5. まとめと次のステップ
今回は、回路の全体ブロック図、主回路と制御回路の分離設計、そしてリレーの多段接続による安全なスイッチングの仕組みを解説しました。
頭の中のアイデアが、整理された設計図のベースに乗ることで、「何をどう繋げばいいか」がだんだんクリアになってきます。
設計図の全体像が見えたら、次はいよいよ「実際にどのパーツ(型番)を揃えればいいのか」の具体的な買い出しへと進みます!…といいたいところですが…
でも、その前にもうワンステップ必要です。
電気がどう流れていくかを追えるようになる必要があります。
次は「シーケンス図」を書く練習をしましょう。
スイッチが押されると電気の通り道ができるとか、その逆だったりとか。
検討の結果、設計や構成部品を変更することも考えられます。
じっくり考えながら進めていきましょう!
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